13 イギリスのB&B

1991年05月02日 (B〜Dの中間地点の小さな村にて)


UK Map Lake District(湖水地方)を目指してA74号線を南下する。Hawick を過ぎたあたりから本格的に雨が降ってきた。気温は5〜6度位でとても寒い。すでに夕方5時を過ぎていて道も暗くなってきた。今日中に Lake District に到着するつもりだったが、あきらめてB&Bを探すことにした。

 適当に走りまわっているのでなかなか見つからない。たまに見つかってもシーズンオフで営業していなかったりする。とうとう夜7時を過ぎてしまった。雨はいっこうにやまず視界も悪い。「これはちょっとヤバイな」とあせってきた頃、一軒のB&Bを見つけた。早速チェックインをしようとしたが満室との事。しかたなくあきらめて再び走り出す。3軒目で断られたとき、さすがに困ってしまい「この辺に今日泊まれるB&Bはありませんか?」と思わず尋ねた。すると「ちょっと待って。」と言って別のB&Bに電話をしてくれた。最初に電話したB&Bはだめだったが、2軒目のB&BはOKとの事。ありがたい・・・、やっと泊まれるところが見つかった。

 ご主人に厚くお礼を言って、紹介してもらったB&Bを目指して再び走り出した。30分ほどかかってそのB&Bをみつけた。これがB&Bか?と思うような立派な作りの屋敷だった。既に9時を過ぎていた。先程のB&Bで予約の電話を入れていてくれたので簡単にチェックインできた。室内は外観に負けず豪華な作りで、オークの木製壁、広いダイニングルーム、年代物の重厚な家具が置かれている。案内された部屋は、広いダブルルームで、テーブルには湯沸し器とティーセットが置かれていて、テレビもあった。洗面室には真鋳のカランがついた石造りの洗面台が置かれていて、広いバスルームはちょっとしたホテル並みだった。いや〜、これは素晴らしいけれどいったいいくら取られるのだろう・・と心配してしまった。するとご主人は私の顔を見て察したのか値段を教えてくれた。何とたったの12ポンド(2,400円)で、ユースホステル並みの低料金だった。

UK 0037 荷物を部屋に運び、シャワーを浴びてから一階の居間でくつろいだ。B&Bは個人の住宅と宿泊施設を兼用しているので居間に座っていると人の家の中にいるみたいだが、落ち着いた内装や家具、暖かい暖炉、そして何よりも家の人の親切なもてなしが旅の疲れを癒してくれる。夜も更けていたが、ご主人が紅茶を入れてくれて運んできてくれた。温かい暖炉のそばのソファーに移動するように勧めてくれた。
 席を移動すると、ご主人が隣りに座って話しかけてきた。ツーリングに興味があるらしく、日本のバイク事情などを私に尋ねた。片言の英語で説明したがなかなかうまく説明できなかった。それでも、うなずきながら熱心に聞いてくれた。暖炉の薪が燃えるパチパチという音と宿泊客の静かな語らいの声だけが、広い居間を満たしていた。この日はさすがに疲れてしまい夢も見ずにぐっすり眠った。



 翌日も天気は回復しなかった。天気が悪いとつい出発が遅くなってしまうが、チェックアウトタイムは10:00がリミットなのでこの時間には出発する事になる。昼頃に Carlisle(カーライル)という古い街に到着した。ここから Lake District に入っていく。ナショナルトラストやポッター原作のピーターラビットの故郷として有名なこの地方は、のどかで暖か味のある風光明媚な自然が保たれている。ただ、観光地なので人は多い。おまけに相変わらず降ったり止んだりのはっきりしない天気で、景色も冴えない。自然保護の標識があちらこちらに立っている。イギリスはゴミの不法投棄が非常に少ない国だが、Lake District はちり紙一つ、吸い殻一本落ちていない。この徹底ぶりには感心する。

 本当は歩いて遊歩道を散策したかったが、天気が悪いのでバイクから降りずにそのまま走り続けた。晴れていたらさぞや美しい景色だろう。ツーリングを開始してからあまり天気に恵まれていない。イギリスは晴の日が少ないらしいのでしかたないかもしれないが、やはり天気がよくないとツーリングはつまらなくなってしまう。結局、冴えない写真を2〜3枚撮ってそのまま Lake District をあとにした。



 ロンドンを出発して、走行距離は3000kmに達した。オイル交換をするために小さな街の外れにある車の修理工場に立ち寄った。
「こんにちは。オイルを交換したいんだけど?」
「ああ、いいよ。けど、バイクは自分でやってくれるか。」
そのつもりなのでOKと言って、さっそく準備を始める。オイルの受け皿を借りて作業を開始した。何人か周りに集まってきていろいろ話しかける。気さくな人たちだ。
「どこから、やってきたんだ?」
「日本から。」
「日本からバイクに乗ってここまでやって来たのか?!」
「い・・いや、そうじゃなくて、出発したのはロンドンで、バイクは日本から船で送ったんだ。」
「イギリスはどうだい?」これはよくきかれる質問だった。
「景色は素晴らしいし、人は親切で、来てよかったよ。」
 うれしそうにうなずいている。旅をしている国を誉めるのは当然だし、イギリス人はプライドが高いので気を悪くするようなことは言わない方がよいと思うが、この国がバイクツーリングに快適で素晴らしいと思ったのは本当の事だった。

 オイル交換が終わり、いくつか細かい整備をしたあと代金を払おうとしたら、
「いや、いいんだ。サービスするよ。」と言って、どうしてもお金を受け取ろうとしない。そこで、代わりに日本から持ってきた京染めのハンカチ(300円くらいの)を渡すととても喜んでくれた。そんな訳で一回目のオイル交換はただで済んでしまった。

 相変わらず天気は悪いが、さらに南下すべく出発した。

 


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