12 ウイスキーとフィヨルドの国

1991年05月01日 Fort William(D地点北100km)


UK Map スコットランドの首都Edinburgh(エジンバラ/D地点)は大きな街だが観光ポイントは街の中心の一角に集中しているので歩いていくことにした。最初にバイクの運転中に見えたEdinburgh Castle(エジンバラ城)に行ってみることにした。街の中心にある大きな岩山の頂上にある城は中世の要塞だった。城の中は王冠や剣などが展示されたクラウンルームがある。そのほかに武器やスコットランドの戦争の記録を展示した博物間も敷地内にあった。1時間ほど見学して城の外に出て城壁の周りを歩いてみた。この場所からの街の眺めは美しかった。

 城を出て石畳の通りを歩いていると、ほのかにウイスキーの匂いが漂っていた。よい香りにつられてそちらの方へ歩いて行く。するとスコッチウイスキーの博物館の前にたどり着いた。どうやらここが匂いの源のようだった。ウイスキーの博物館とはさすが本場という感じ。さっそく見学することにした。展示室の中はウイスキーの製造行程や歴史などを模型を使って解説してあったがほとんど内容はわからなかった。館員の人がいろいろ説明してくれたがやはりよくわからなかった。もう少し英語が分かればきっと興味ある話が聞けただろうに。期待していた試飲は・・・無かった 。ははは・・(^_^; 出口のそばにウイスキーの即売所があって、ミニボトルだけでも悠に100種類は並べてある。これは素晴らしい! いろいろなウイスキーを買いたかったが、そんなに沢山バイクに積んで走るのは無理というもの。仕方ないのでビンのデザインだけで選んだミニボトルを2個買った。5ポンドだった。

 城のある岩山を下りてきて、街の中心の通りになっているLothian Streetを散策した。営業しているパブを探したが今日は日曜日なのでほとんどの店は休みだった。通りの外れに1件だけやっている店を見つけてそそくさと入る。パブではビールを飲む事のほうが多かったが、せっかく博物館にも行ったことだし、スコッチウイスキーを注文した。出されたのは日本でお馴染のグラスに大きな氷の塊が一個入ったごく普通のウイスキーのようだった。どれどれと一口含んでみる。カシの木の樽やピートの香りが強くて日本で飲んだことのない独特の味がした。「ほ〜っ!」なんかとてもリッチな気分になった。2杯飲んでからほろ酔い気分で街を歩き回った。バイクに乗ってこなくて良かった・・・。



 2日間Edinburghに滞在してから、さらに北上することにした。Edinburghより北は岩山だらけの荒涼とした風景が続いた。空はどんよりと雲が立ち込めて気温はますます下がってきた。走るのが辛い。バイクに装着してある気温計は+5度あたりを指している。ありったけの服を着込んで運転を続ける。途中、イギリスで一番美しいと言われているLoch Lomond(ローモンド湖)を通過した。静寂さに包まれた大きな湖だった。天気が悪いせいで、残念ながら景色全体が灰色のモノトーンになってしまっていた。5月になったばかりだが、新緑の季節はもう少し先のようで木々も冬眠から覚めていない。さらに走っていくと、岩山の谷間に小さい湖が次々と出現した。どの湖も山の形に合わせて細長い。まるで「Bryce」で造形したような幻想的な風景だった。A82号線はこのようなパノラマがくり返し続いた。

UK 0034 気温はとうとう+1度になった。必死に70〜80kmの走行スピードを維持する。非常に寒くて辛い。大型のフロントカウルのおかげでどうにか走っていられるが、何も風を遮るものが無かったらとてもこんなスピードでは走れないだろう。一休みして体を暖めたかったが、パブはおろか人家すら無い。しかたないので小さな湖のほとりに停まって一服する。ヘルメットを脱ぐと吐く息は真っ白だった。それにしても美しい景色だ。この湖は何という名前なのだろう? 道路地図を見ると「Loch Tula(チュラ湖)」と書いてある。湖面は静かで鏡のようだ。まだツーリングの序盤だがこんなところまできてしまった。これから一年近くどんな旅が展開して行くのだろうか?

 一度冷えきってしまった体はじっとしていてもなかなか暖かくならなかったが、いつまでここに立っていてもしかたない。かじかんだ手でとりあえず写真を一枚とって再び走り出した。走り出してまもなく、チラチラと粉雪が降り出してきた。「あら〜っ!」これは参った。「どうしようか?」走りながら考える。考えているうちにさらに雪が激しくなってきた。まだ路面に積るほどではないが、この降り方ではヤバそうだ。このまま北上を続けるべきか、引き返して南下するか・・・判断がつかない。空はいっこうに晴れる様子はない。

 あれこれ悩みながら走っていると海に出た。ずっと湖沿いを走っていると思っていたが、湖ではなく内陸に入り込んだ海の入り江を走っていたのだ。さらに海岸沿いを走ってFort William(D地点北100km)までやってきたが、とうとう戻ることにした。あと少し行けばネッシーで有名なLoch Ness(ネス湖)だが、こんな所で雪のために立ち往生してしまったら泊まるところも無い。Fort Williamにはイギリスで一番高いBen Nevis山(といっても標高わずか1344mに過ぎない)があるが、曇っていて頂を見ることは出来なかった。晴れていればさぞよい眺めだったろうに・・・。バイクでイギリス最北端を目指すなら6月に入ってからでないと厳しいかもしれない。

 


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