09 イギリスの道路

1991年04月25日 Chester(イギリス中部B地点)


UK Map 曇りの日が多いロンドンだが、今朝は天気がよかった。青空が拝めたのは久しぶりだ。まだ時間が早いので誰も起きていない。部屋からそっと荷物を運び出してバイクに載せた。バイクは朝露でびっしょりだった。これから出発できるのかと思うとうれしくて、つい心がうきうきしてしまう。一昨日までの憂鬱な気分が嘘のようだった。
 身支度をしているうちに、Reikoさんが外に出てきた。寒そうに手を組みながら「こんなに早く出発するの?」と聞いた。
「はい。目が覚めちゃってじっとしていられなくて・・・。すみません。朝早いのにガタガタと騒がしくて、目を覚まさせちゃったみたいですね。」頭を掻きながら私は答えた。Reikoさんは、
「いつも、私はこのくらいの時間に起きるのよ。待っててね。今朝食準備するから。」
 そういえば私はいつも朝寝坊で、こんなに早く起きたことがなかったので、Reikoさんが早起きな事を知らなかった。朝食を済ます頃には、Reikoさんの家族が起きてきてにぎやかになった。2週間以上も滞在していたのですっかり親しくなってしまった。インド人のご主人には本格的なインドカレーの夕食をごちそうしていただいたり、AA(イギリス自動車協会)の本を頂いたり、家族のようにお世話していただいた。出発の直前にみんなで記念写真を撮った。

 HENDONのReikoさんのB&Bから500mくらい離れたところを高速道路が走っているが、すぐそばに来るまでそこに高速道路があることは全く分からない。高速道路は周囲の住宅街より20mほどアンダーカットされたレベルに建設されていて、道路の周囲は盛土と植樹を配されているためだ。実際、HENDONは四方が幹線道路に囲まれているのに、見事な道路計画によって美しい郊外の景観と静けさが保たれている。あらためてイギリスの都市計画の素晴らしさを実感した。
 すぐそばのインターからM1(高速道路1号)にのって北西に向った。M1は日本でいえば東名高速のようなものだ。料金所のない高速道路というのは「これから高速道路に乗るぞ。」といったかしこまった雰囲気がない。道を曲がったらそこが高速道路になっているといった感じで、その気軽さに少し妙な気がした。
 本線に乗ると割と交通量が多かったが、どの車も整然と走っていた。特にトラックドライバーの運転マナーが素晴らしく、どのトラックも高速道路の交通秩序のお手本のような安全運転をしている。平均速度は速く、110〜140Km/hといったところだった。これだけのスピードを出せれば、大抵のドライバーはフラストレーションがたまることはないだろう。路面状態は良く道幅が広い。この道路が無料で走れるとはなんて素晴らしい国だろう。
 高速道路を走っているうちに、インターがとても多いことに気がついた。短い間隔で高速道路の乗り降りのためのインターが現われる。これならば、高速道路は身近な道路として使いやすいことだろう。料金所を配置する必要がないのだから、いくらインターを増やしても経費がかかることはない。あらためて、日本との差を考えてしまった。
 M1を150kmほど走ってから分岐してM6に乗り、リバプールの方向へ向った。途中バーミンガムをスムーズに通りすぎてストークの辺りで高速道路を降りてA50(国道50号)を西に進んだ。今日の目的地はチェスター(B地点)だ。

 高速道路を降りると景色が一変した。並木で囲まれた畑や牧草地の中に、石やレンガ造りの民家が点在する田園地帯の風景が広がった。どの方角も絵になりそうだった。こんなに美しい景色なら、もっと早く高速道路を降りればよかったかなと少し後悔した。チェスターまではあと20km足らず。まだ時間が早いので、国道をそれて田舎道の方へ入っていった。
UK 0059 緩やかな丘陵地帯を少し幅の狭い道がくねるようにどこまでも続いている。アップダウンを繰り返すたびに少しづつ違う風景が現われる。少しスピードを落として景色を堪能しながら走った。道の途中で民家を改造した石造りのパブを見つけた。ここで一休みすることにしよう。店の前にバイクを停めてエンジンを切る。ヘルメットを脱ぐと、春の涼しいそよ風が顔に吹きつけた。古いインテリアが置かれた木造りの店内は落ち着いた雰囲気だった。昼食には時間が早いので紅茶を飲む事にした。イギリスは紅茶の国なので、どこのパブでも大きなポットに出されてきて、たっぷりと飲める。そして値段は安い。窓辺の席に座ってゆっくり紅茶を飲みながら外に停めてある自分のバイクを見つめた。これから1年間、あのバイクと一緒に旅をする。

「オレの相棒、頑張ってくれよ・・・」心の中でつぶやいた。

 

 


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