08 国道406号

1991年04月24日 LONDON


 走り出して少し経つと、フロントスクリーンがカタカタと揺れているのに気がついた。すぐに路肩に寄せてよく見ると、ビスが2本脱落している。輸送中に落ちてしまったようだ。スペアビスをつけるためにサイドボックスをあけて荷物を取り出した。
 その時1台の車が近づいてきて後ろに停まった。振り返ると先程の税関の係官が車から降りてきた。「だいじょうぶかい?」
 なんと、10kmも心配して私の後ろをつけていてくれていたのだ。「大丈夫です。ちょっとネジが外れただけですから。ここの部分の・・」私が指をさすと、彼は覗き込んだ。実は彼もバイクフリークでBMWに乗っているそうだ。
「今ごろからイギリスはよい季節になるからツーリングにはぴったりだよ。これからどこに行くんだい?」と尋ねるので、とりあえずHENDONまで荷物を取りに戻ると答えると、
「それでは途中まで先導してあげよう」といって、私の前を走り出した。彼はついてゆきやすいようにゆっくりと走ってくれた。

 HENDONはロンドンの西側、ここは東側なので「環状線A406」をぐるりと半周して戻ることになる。途中、何回かランナバウト(ロータリー)を通過したが、彼が先導してくれたのでうまく切り抜けた。イギリスは日本と同じ左側通行なので走りやすかった。それにしても巡航速度が速い。大都市のほんの近郊道路なのに、どの道も90km/hの走行だった。そして至るところがジャンクション(立体交差)になっていた。普通の道路がまるで高速道路みたいだ。しばらく走っていると彼の車が再び路肩に寄って停まった。「HENDONはこの道をまっすぐいけばすぐだよ」
 彼は別の道へ行くようだ。私は彼にお礼を言った。ここまで来るのにわずか20分だった。地図を見て現在地を確認した。HENDONまではあと10km足らず。東京では考えられないハイペースだ。

 再び発進した。信号機はほとんどなくスピードが落ちない。5kmほど行ったところでHENDONの道標を見つけた。あとはその方角ににしたがって走ればよいだけだった。やがて、HENDONの駅前の見慣れた道路が現われた。「これなら迷いようがないよなあ」思わずつぶやいてしまう。予定よりもずいぶん早くReikoさんのB&Bに到着した。Reikoさんが出てきて「あら! バイク引き取れたのね。よかったじゃない。」とよろこんでくれる。
「ええ、思ったよりもすんなりでした。」私もうれしくて、車で先導してくれた税関の人の話をした。Reikoさんは、笑いながら楽しそうに聞いていた。

 無事にバイクを引き取れたことをKuwahara Ltd.に行ってTさん報告した。
「予定では1年後にイギリスに戻ってくるつもりです。」
「きおつけて行ってきてね。無事に帰ってきたら、またこっちに来てね。」Tさんが外に出てきて見送ってくれた。

 午後は買い出しをするために、HENDONからバイクで10分ほどのところにある「Brent Cross Shopping Centre」に出かけた。とても巨大なショッピングセンターで、まるで幕張メッセのような感じだ。そしてここにアクセスする道路は何とジャンクションになっていた。つまり車でしかここに来れないようになっている。あらためてイギリスは車社会の国なんだと思い知らされた。
 さあ、いよいよ明日はスコットランドに向けて、待ちに待ったツーリングの出発だ。この日の夜はReikoさんがささやかなお祝いをしてくれた。

 

 


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