01 旅のきっかけ

1990年03月 TOKYO


 とうとう累積点数が10点を越えた・・・。そんなに無謀な運転をしているつもりは全然ないのだけれど、何故か年に1度か2度はつまらない違反で捕まってしまう。そもそも交通の流れの先頭を切って走るバイクというのは不利な乗物だ。
「このまま行ったら運転免許取消しだなあ。」思わずため息が口から漏れる。

 自分の生活からバイクがなくなることは考えられなかった。V-Maxは手足の一部と化していて、仕事でも私用でも、どこへ行くにもスクーターのようにV-Maxに乗っていた。一日に一度はエンジンの音を聞かないと気が済まない。特別よい排気音とは思わないのだけれど、セルを回してエンジンがかかると何故かほっとする。まるでバイク中毒だ。
 V-Maxはそんな私の気持ちに応えてくれた。調子が悪くなることはよくあったけれど、根気よく直せば元気を取り戻して快調に走ってくれた。昔からメカいじりは好きだったので、特殊工具を必要とするもの以外の整備や修理はなるべく自分でやっていた。バイクは乗る楽しみとメカに触れる楽しみの2つがある。しかしこのままでは遅かれ早かれ、楽しみの1つはなくなりそうだった。

Norway 0294 (リルハンメル郊外) そんなある日、テレビを見ていると、画面にドイツのロマンチック街道の映像が写った。走る自動車の運転席から前方を撮影している映像で、緩やかにカーブする道に沿って田園風景や建物が次々と現われた。ほんの数分間の映像だったが、心に焼きついた。
「こんなところを走ってみたいな・・・」
 漠然とではあったけれど、海外ツーリングに対する思いが募り始めた。加曾利隆さんや堀ひろこさんの海外ツーリングの本を読んでいたので、いつか自分も行ってみたいなあという気持ちは昔からあった。
 日本は、北に行っても南に行っても、いいとこ3日で海に出て行き止まり。この先にも国があるのに、海を越えて向こうに行けないのだ。
「バイクで外国を走れたら楽しいだろうな」
「待てよ・・・。1年くらい海外ツーリングに行ってしまえば、帰ってくる頃には累積点数が帳消しになってるぞ」これは、我ながらグッドアイデアだ。
「俺ももう29だ。今行かなかったら、一生、海外ツーリングなんて無理かもしれない」
 そう思うといても立ってもいられない。かくして海外ツーリング実現のための準備がはじまった。

 

 


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